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1: ジャン・ポール◆Vkp7zYl5.c 2016/02/11(木)14:38:52 ID:3Ps
北朝鮮が2006年に初の核実験をした直後、たまたまパリにいた私はエマニュエル・トッド氏と対談し
た。70年代にソ連の崩壊を予言したことで有名なフランスの学者だ。2002年に出した著書「帝国以
後」では米国の凋落を予告し、世界的なベストセラーになっていた。
北朝鮮のことはよく知らないので予言できないとしつつ、核兵器を実戦配備するまでには崩壊する
のではないかと語ったが、目下はその兆しがない。いま彼の考えを聞きたいものだが、それはともか
く対談で私を驚かせたのは、彼が日本の核武装をしきりに勧めたことだ。
「核兵器は偏在こそが怖い。広島と長崎に原爆が使われたのは、米国だけが核を持っていたためだ。
米ソの冷戦時代には互いに使わなかった。インドとパキスタンも、双方が核をもってから和平のテー
ブルについた。東アジアでは、未知の北朝鮮は別として、中国だけが核保有国では安定しない。だか
ら日本も持つべきだ」という論理だった。
私は、唯一の被爆国である日本では国民の間に核への拒否反応が極めて強いと説明したが、彼はそれ
を克服しろと言う。日本の大きな構造問題は米国と中国という二つの不安定な巨大国家の存在だ。米国
はイラク戦争のように、すぐ軍事力に訴えがちだし、中国は種々の社会問題による国民の不満を「反日
ナショナリズム」によって外に向ける。中国を抑制し、米国から自立するためにも日本は核をもつべ
きで、それこそが戦争に巻き込まれるのを避ける道だというのだ。
フランスは第二次世界大戦のあと、ドゴール大統領が核の保持に踏み切った。米英の核に頼らなかっ
たのは、フランスが何度も侵略を受けてきたからだという。だが、アジア侵略の記憶が周辺国にまだ
残る日本が核をもてば悪影響は計り知れず、必ず軍拡競争を招くことだろう。私は「非核」を掲げて
核軍縮を訴え続けることこそ、日本の役割だと反論したのだが、何とも刺激的な体験だった。
さて、最近は北朝鮮の核やミサイル発射に挑発されて、韓国でも有力紙に核武装の議論を真剣に主張
するコラムが登場するなど、核保有論が頭をもたげてきたようだ。だれも北朝鮮を抑えることができ
ない現状からすれば、その気持ちも分からないではない。日本が原発のため、核兵器に転用できる高
濃縮プルトニウムを蓄積しているのに比べ、韓国はそれも認められないといういら立ちが強いのだろ
う。
だが、そのコラムに書かれたように、日本がそんな立場の違いから「隣の不運の陰でにたにたと笑っ
ている」と考えるなら大間違いだ。いかに潜在能力をもつとはいえ、核武装するとなれば米国との対
立を覚悟しなければならず、日米安保条約の存立にかかわってくる。現実の選択肢にはないといえ、
米国の核に頼るしかないのは日本も全く同じなのだ。
それどころか、いくら何でも狭い半島の中で、彼らが同胞に向けて核を使うだろうかという疑問もあ
る。南北共同で開発した核兵器が日本に打ち込まれるという空想小説が、韓国でベストセラーになっ
たこともある。むしろ一番の脅威にさらされているのは自分たちだと感じる日本は「にたにた笑う」
どころではない。いや、互いに脅威の度合いを張り合っても仕方ない。重要なことは、いまこの両国
こそが、強い脅威感と焦燥感を共有しているという事実である。
後略:そんな中、K-POPのBIGBANGが久しぶりに日本のテレビに登場。4年ぶりに日本でアルバムを出
す。深刻なニュースの中、こういう若者文化の交流が北の脅威に対する一番の力ではないか。北朝鮮
を変えるのは武力ではなく豊かさと自由への渇望だろう。
(若宮啓文 日本国際交流センター・シニアフェロー、元朝日新聞主筆)
東亜日報
http://japanese.donga.com/List/3/all/27/525090/1
た。70年代にソ連の崩壊を予言したことで有名なフランスの学者だ。2002年に出した著書「帝国以
後」では米国の凋落を予告し、世界的なベストセラーになっていた。
北朝鮮のことはよく知らないので予言できないとしつつ、核兵器を実戦配備するまでには崩壊する
のではないかと語ったが、目下はその兆しがない。いま彼の考えを聞きたいものだが、それはともか
く対談で私を驚かせたのは、彼が日本の核武装をしきりに勧めたことだ。
「核兵器は偏在こそが怖い。広島と長崎に原爆が使われたのは、米国だけが核を持っていたためだ。
米ソの冷戦時代には互いに使わなかった。インドとパキスタンも、双方が核をもってから和平のテー
ブルについた。東アジアでは、未知の北朝鮮は別として、中国だけが核保有国では安定しない。だか
ら日本も持つべきだ」という論理だった。
私は、唯一の被爆国である日本では国民の間に核への拒否反応が極めて強いと説明したが、彼はそれ
を克服しろと言う。日本の大きな構造問題は米国と中国という二つの不安定な巨大国家の存在だ。米国
はイラク戦争のように、すぐ軍事力に訴えがちだし、中国は種々の社会問題による国民の不満を「反日
ナショナリズム」によって外に向ける。中国を抑制し、米国から自立するためにも日本は核をもつべ
きで、それこそが戦争に巻き込まれるのを避ける道だというのだ。
フランスは第二次世界大戦のあと、ドゴール大統領が核の保持に踏み切った。米英の核に頼らなかっ
たのは、フランスが何度も侵略を受けてきたからだという。だが、アジア侵略の記憶が周辺国にまだ
残る日本が核をもてば悪影響は計り知れず、必ず軍拡競争を招くことだろう。私は「非核」を掲げて
核軍縮を訴え続けることこそ、日本の役割だと反論したのだが、何とも刺激的な体験だった。
さて、最近は北朝鮮の核やミサイル発射に挑発されて、韓国でも有力紙に核武装の議論を真剣に主張
するコラムが登場するなど、核保有論が頭をもたげてきたようだ。だれも北朝鮮を抑えることができ
ない現状からすれば、その気持ちも分からないではない。日本が原発のため、核兵器に転用できる高
濃縮プルトニウムを蓄積しているのに比べ、韓国はそれも認められないといういら立ちが強いのだろ
う。
だが、そのコラムに書かれたように、日本がそんな立場の違いから「隣の不運の陰でにたにたと笑っ
ている」と考えるなら大間違いだ。いかに潜在能力をもつとはいえ、核武装するとなれば米国との対
立を覚悟しなければならず、日米安保条約の存立にかかわってくる。現実の選択肢にはないといえ、
米国の核に頼るしかないのは日本も全く同じなのだ。
それどころか、いくら何でも狭い半島の中で、彼らが同胞に向けて核を使うだろうかという疑問もあ
る。南北共同で開発した核兵器が日本に打ち込まれるという空想小説が、韓国でベストセラーになっ
たこともある。むしろ一番の脅威にさらされているのは自分たちだと感じる日本は「にたにた笑う」
どころではない。いや、互いに脅威の度合いを張り合っても仕方ない。重要なことは、いまこの両国
こそが、強い脅威感と焦燥感を共有しているという事実である。
後略:そんな中、K-POPのBIGBANGが久しぶりに日本のテレビに登場。4年ぶりに日本でアルバムを出
す。深刻なニュースの中、こういう若者文化の交流が北の脅威に対する一番の力ではないか。北朝鮮
を変えるのは武力ではなく豊かさと自由への渇望だろう。
(若宮啓文 日本国際交流センター・シニアフェロー、元朝日新聞主筆)
東亜日報
http://japanese.donga.com/List/3/all/27/525090/1
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